こんにちは。開発副本部長の okady です。
サイボウズ開発本部では2019年に組織変更を実施し、当時のインタビュー記事で私はこんなことを言っていました。
「マネージャー、いないと無理なら、またつくればいい」
サイボウズの開発本部がマネジャーをなくしてみた「いないと無理なら、またつくればいい」 | サイボウズ式
そして今回の記事は、当時の私自身の言葉に応えるタイトルにしました。
「マネージャー、いないと無理だったので、またつくりました」
2019年の組織変更から3年が経ち、目的は概ね達成できました。しかし、思い通りにいかなかったことや当初想定していなかった問題もたくさんありました。そして2022年5月、開発本部の組織力をさらに強化すべく再び大きな組織変更に取り組むことを決断しました。
この記事では、2019年の組織変更とその後を振り返った上で、2022年に実施した新たな組織変更についてご紹介します。
2019年の組織変更
2019年の組織変更の詳細は、私と同じく開発副本部長を担っている水戸さんが当時書いた記事をご覧ください。 blog.cybozu.io
ざっくりまとめるとこのようなものでした。
- 2018年以前は「職能・地域ごとの部署 × 開発チーム」のマトリクス組織
- 「各チームのメンバーが職能の枠を超えて、チーム全体で同じ方向を向いて活動できるようになること」を目的に組織変更を実施
- チーム主体で効果的な意思決定ができるようマネージャー(部長や副部長)が持っていた役割の一部をチームに委譲
- 給与評価や健康管理など、チームへの委譲が難しい人材マネジメントの役割を一手に担う「組織運営チーム」を設立して各チームを支援
- 結果、マネージャーという役職に残る役割がなくなったためマネージャーを廃止
組織変更後の3年間
組織変更の目的である「チームのメンバーが職能の枠を超えて、チーム全体で同じ方向を向いて活動できるようになること」は、この3年間で大きく前進しました。職能間でのミッション対立はなくなり、職能間で仕事を受け渡すスタイルからクロスファンクショナルチームで協働するスタイルに変わりつつあります。予算や出張計画など、マネージャーがいなくてもチームに必要なものはチームで決められるようになりました。
組織運営チームが担う人材マネジメント業務に関しては、組織変更直後は組織の形は変われど元マネージャーがメンバーの給与評価や健康管理を担う構図に変わりはなく、これまで積み重ねてきた信頼関係のおかげで大きな混乱はありませんでした。しかし、組織変更から時間が経つに連れて、効果的な人材マネジメントを行うことがどんどん難しくなっていきました。
人材マネジメントには多くの役割があり、高い専門性や会社の制度・文化の深い理解が求められます。3年前の組織変更では人材マネジメントの役割を分解し、委譲によってチームが活動しやすくなるものはチームに委譲しました。そしてチームへの委譲が難しいものを組織運営チームに集約しました。その結果、給与評価や健康管理といった人材マネジメントの中でもより難易度の高い役割が元マネージャーの集まる組織運営チームに集中し、他のメンバーがそういった役割に触れる機会もなくなってしまいました。人材マネジメントの役割を分散できればすべてを担うマネージャーは要らない。そう考えて実施した組織変更は、逆に難易度の高い役割を一部の人に集中させることに繋がってしまったのです。
人材マネジメントの高い専門性や会社の制度・文化の深い知識が求められる組織運営チームに新しく人を入れるのは難しい。一方で組織はどんどん大きくなる。組織運営チームは今いる人員でより多くのメンバーに対応するため効率化を進めるしかなく、人材マネジメントの品質はどんどん低下していきました。例えば、普段の業務と関わりの薄い組織運営チームが給与評価を担うのは納得感が薄い、チームを支えてくれるマネージャーがいない状態で誰が採用や育成に責任を持っているのかわからない、といった声が聞こえてくるようになりました。最終的に、組織運営チーム6名でメンバー約200名の人材マネジメントを分担している状況でした。
再び組織変更にチャレンジ
そして2022年5月、再び大きな組織変更にチャレンジすることにしました。人材マネジメントの属人化や品質低下といった問題を解消するため、そして今後の組織拡大に備えて、組織の形を見直して人材マネジメントの役割をスケールしやすい体制にしました。
組織の形としては「職能ごとの部署 × 開発チーム」の一般的なマトリクス組織を採用しました。開発チームの活動には手を加えず、職能ごとの部署に人材マネジメントの機能を持たせるようにしました。具体的には、採用・育成・給与評価・人員配置・健康管理・成長支援などです。
また、人材マネジメント担当者を4段階の階層構造にし、総勢50名以上で役割分担することにしました。経験やスキルに応じて人材マネジメント担当者を配置でき、人材マネージャーのキャリアをイメージしやすくなるメリットもあるのではないかと期待しています。
- 本部長/副本部長:16の職能を分担し、人材マネジメントに関する意思決定を担う(3名)
- 人材マネージャー(部長):職能全体を見て、人材マネジメントに関する起案を担う(4名)
- サブ人材マネージャー(副部長):人材マネージャー(部長)から委譲された役割を担う(16名)
- アシスタント人材マネージャー:チームの一員としてメンター的な役割でメンバーと密にコミュニケーションし、人材マネージャーとの橋渡しも担う(32名)
そして、3年前の組織変更の目的であった「各チームのメンバーが職能の枠を超えて、チーム全体で同じ方向を向いて活動できるようになること」をさらに強化できるよう、人材マネージャーの責務を「それぞれのチームがより大きな成果を出せるように、対象職能のメンバーが所属チームで活躍できる環境を整えることや体制面で支援すること」としました。2018年以前と比べて、職能ごとの部署はミッションを持たず、マネージャーは人材マネジメントだけを担う点が大きな違いです。
ここまでを振り返って&今後に向けて
今回の組織変更でサブ人材マネージャー(副部長)を引き受けてくれた16名のほとんどが人材マネジメント未経験ですが、慣れない中でも責任感を持って取り組んでくれています。また、アシスタント人材マネージャーは橋渡し役として人材マネージャーと連携しつつ、チームメンバーとうまくコミュニケーションしてくれています。
新しい体制で早速、給与レンジテーブル策定や新卒採用募集開始などいくつかの大きめの人材マネジメント業務に新体制で取り組みました。人材マネジメント担当者が増えて単に負荷が分散されただけでなく、新しい視点のフィードバックを得られたり、職能ごとに深く議論できたりと、たくさんの良い面が見えてきています。
一方、今回人材マネジメントにチャレンジしてくれたメンバーからは、人材マネジメントをやり始めると業務マネジメントまで手が回らないという声もあれば、人材マネジメントだけでなく業務マネジメントもセットで担う方がやりやすいという声も出てきています。マネジメントの役割をどれだけ分散させてどれだけ集中させるかは、組織の規模や文化、ビジネス要求、マネージャー個々の得意分野やスキルなど、いろんな要素が絡み合う答えのない問いなんだろうと思います。これからも組織に関する悩みが尽きることはないでしょうが、変わり続けられる組織でありたいなと思っています。