組織変更したら部長がいなくなりました

こんにちは、最近愛媛から広島に移住した組織運営チームの水戸です。

2019年からサイボウズの開発本部から職能・地域毎に分かれた部署がなくなり、チーム主体の組織になりました。 組織変更をオープンに議論するというチャレンジングな試みの中で、新組織の理想はユーザー価値の最大化に定まり、個人やチームがより主体的に動ける組織構造に変わりました。 この記事では私がファシリテートを担当した組織変更をご紹介します。

開発本部の状況

開発本部の役割は製品を開発することです。 2018年までの開発本部はマトリクス組織を採用しており、プロダクト開発チームには様々な職能・地域毎に分かれた部署のメンバーが所属していました。 この組織構造は事業の中心がオンプレミスだった10年以上前から、事業の中心がクラウドに移った2018年に至るまで変わっていません。 2018年の組織体制

一方、プロダクト開発チームに求められるものは大きく変わりました。 短いサイクルで開発した製品を安全にリリースし、運用本部と連携して安定運用し、得られたデータを開発に活かしながらより多くのお客様に価値を届け続けていく事の重要性は高まっています。 このようなオンプレミスからクラウドへの変化にあわせて、開発スタイルはウォーターフォールでの指揮統制・分業型からスクラムでの自己組織化・機能横断型に大きく変わりました。

組織変更の議論

開発スタイルが変化することで職能に閉じない活動が増え、マトリクス組織ではやりづらい部分が出てきました。 これまでのようにマトリクス組織のまま改善していくという選択肢もありましたが、「組織構造がチームの改善の大きな妨げになっているのでは?」、「今の状況に対してマトリクス組織が最適なのか?」という問題意識から組織変更の議論が始まりました。

議論はマネージャーと関係者のみでクローズドに進めるのではなく、オープンに進めました。 組織変更という人に関連する議論をどこまでオープンにできるのか懸念はありましたが、組織変更の効果を高めるには実現したい理想が広く知られている状態にすることが重要と判断しました。 また問題意識や改善のアイデアを広く収集できるという期待もありました。

問題意識の収集はヒアリング中心で、できるだけ多くの人から話を聞く方針で進めました。 その結果、開発本部の日本の全チームの複数職能を網羅するだけでなく、業務で関わりのある他本部も対象に約60組からお話を聞かせてもらいました。 ヒアリングした内容はヒアリング対象者の合意を得た上でほぼ全て公開していきました。 公開することで、自分にもヒアリングしてほしいというリクエストをもらえたり、組織変更を待たずチーム内での改善が始まったりするなどの良い効果もありました。

ヒアリング結果をごく一部ですが紹介します。

  • QAが回帰試験を自動化しているが、プログラマーも協力したほうが早く進みそう
  • 職能を越えて改善はしているが他職能に踏み込むハードルは高い
  • 職能と組織と権限の関係がよくわからない(例:元プログラマーのデザイナーは不具合改修してよいのか)
  • 活動の相談相手はチームメンバーだが承認者はチーム外のマネージャーで説明コストが高い
  • 異動に一大事感がある
  • マネージャーが異動やキャリアに権限持ちすぎ

また、同じプロダクトに関わっていてもミッションは職能毎に作られ、他職能にミッションがあまり知られていないケースもありました。 これらヒアリングを整理し、組織変更の最大のテーマをユーザー価値の最大化に定め、サブテーマを4つに絞りました。

  1. ミッションのズレを避け組織・職能を越えて協力していくには
  2. チームとしてもプロダクトとしても継続的に学習していくには
  3. 個人が専門性を高めたり、チーム間で知見を共有しやすくするには
  4. 個人・チーム・マネージャーがどう役割分担するのが良いか

上記テーマを基に誰でも自由に参加可能な形式で議論を重ね、新組織を形作っていきました。

新組織

新組織では職能・地域毎に分かれた部署がなくなり、開発本部の直下にチームがフラットに並びます。 チームには製品開発をミッションに持つkintoneやGaroonの他、他のチームを支援するAgile Coachや生産性向上があります。 部署がなくなることで部長という役割もなくなり、予算・勤怠など部長権限はチームに委譲されました。 あわせて責任範囲も見直し、「開発完了の起案者はQA」等の職能に紐付いた社内ルールもなくなりました。 また、個人が専門性を高めたりチーム間で知見を共有しやすくするために、自由に設立・参加できるコミュニティ制を導入しました。 2019年の組織体制

以下が新組織の狙いです。

  • 職能単位での部分最適化ではなく、チーム全体で最適化しやすく
  • 従来の職能の枠にとらわれず、個人の多様なスキル・個性を活かしてプロダクトやチームに貢献できるように
  • チームに必要なことはチームで意思決定できるように、権限と責任をチームに委譲
  • 主体的にキャリアを作れるように異動をカジュアルに

今回の新組織は個人やチームが動きやすくなることを重視しています。 それを支援するチームとして組織運営チームが新設されました。 組織運営チームは開発本部のメンバーがやりたいことをやりやすくするためのチームで、元マネージャーが多く所属しています。

組織変更後

組織変更をして1ヶ月が経過しましたが大きな混乱は起きてないように見えます。 その理由としては組織変更により仕事のやり方を強制的に変更させられるわけではなく、今までと同じやり方を続けることも可能だったこともあると思います。 とはいえ何も変わらなければ組織変更は失敗なので、これからいろんなチームの取り組みが加速していくのが楽しみです。

また今回の組織変更は開発本部に絞りましたが、他本部ともっと一緒にやっていきたいという声も聞きました。 実際、運用本部やビジネスサイドとの動きが出はじめており、こちらも今後が楽しみです。

終わりに

本文では触れませんでしたが、これまで様々なチームが改善の取り組みをおこなってきました。

また、ヒアリングの中でも「こうすればもっと良くなりそう」というたくさんの思いを聞かせてもらいました。 新組織で障害が取り除かれ様々な改善がしやすくなると期待してますが、今回の組織変更は1ステップにすぎないので今後もユーザー価値の最大化のために最高の組織を目指していきます。