「サイボウズのスクラムマスター育成・評価事情を語る会」Regional Scrum Gathering Tokyo 2023 #RSGT2023

開発本部 People Experience チーム内にあるコネクト支援チーム所属の西原 @tomio2480 です。
 
2023 年が明けてすぐ 1/10(火) から 1/13(金) に開催された「 Regional Scrum Gathering Tokyo 2023 」にサイボウズはシルバースポンサーとして協賛しました。これに関連して Day2 にスポンサーセッションを行いましたので、そのレポートを記します。

サイボウズのスクラムマスター育成・評価事情を語る会

開発本部では昨年末にあった組織体制の変更に伴い、スクラムマスター職能に約 15 名のメンバーが所属することになりました。これにあわせて、スクラムマスターの成長支援や評価の体制を今回登壇する 3 名が整備しました。本セッションは新たに整備された新体制について、対談形式のセッションでした。実際に公開されたセッション概要は、以下 ConfEngine にあるとおりです。
confengine.com  
本セッションで登壇した天野さん @ama_ch 、大友さん @toshiotm 、北地さん @tos_work1616 の 3 名がスクラムマスター職能のマネージャーを担当しています。
 
セッションのはじめに、北地さんから組織体制の変更について、以下のブログ記事をベースに現状の説明がありました。 様々、紆余曲折を経ての現在ということで今回のテーマにつながっているというお話しがありました。 blog.cybozu.io  

キャリアラダーと給与設定の苦悩

天野さんから給与決定について説明がありました。
 
新体制では、開発本部内の全ての職能はそれぞれの職能ラインに「ジュニア」「ミドル」「シニア」の 3 段階、職能によっては「シニア+」を含めた 4 段階の区分を設定し、それぞれのメンバーがどの区分に該当するかを決定、その幅の中で給与決定する。ということになりました。区分こそあれど、従来からある「転職したらこれくらいもらえる」という指標も生きた形です。スクラムマスターについては年収 500 万円から 1,500 万円の幅で設定することにしたようです。
 
この記事を書くにあたり、天野さんから以下の補足コメントをいただきました。

開発現場をまったくの未経験の状態でスクラムマスターとして開発チームに参加しても、効果的な支援をするのは非常に難しいだろうと考え、何らかの開発チームでの経験を必須にしました。500万円という最低ラインにはその考えが反映されています。 新卒でいきなりエンジニアリングマネージャーになることはないと思いますが、それと似ています。

大友さんからは給与幅と人材レベルのお話しがありました。
 
ものすごいやり手のスクラムマスターの方に来ていただいても 1,500 万円...... と、上限を設定する気持ちの難しさを抱えながらも、夢のある金額にしたいという思いがあったようです。
 
一方、ジュニアレベルの最低ラインが 500 万円だから、未経験の入り立てスクラムマスターもそれだけもらえるのか?というのは難しい。という話が挙がりました。バックログの管理ができても、支援しているチームに効果が現れなければ意味がなく、ここにも苦悩があるようです。スクラムマスターは学校等で体系化された学習ができるわけでもありません。だからこそ、この 500 万円という最低値には「この仕事はそんな甘いもんではないぞ」という意志が乗っているとのことでした。
 
この話を受けて天野さんから、ミドルは「その人ひとりが入ったら効果がきちんと現れる状態」と定義したこと、スクラムマスターの給与設定はエンジニアリングマネージャーと要求される価値は似通っていることから、同じくらいの水準に落ち着いたと補足がありました。

どういった環境が整えばスクラムマスターに活躍してもらえるか

サイボウズのスポンサーセッションで登壇する 3 名とスライドショーの様子
セッション中の様子

大友さんからサイボウズの現状と合わせて説明がありました。
 
現状、サイボウズにはシニアレベルのスクラムマスターが活躍できる環境は整っておらず、せいぜい 8 チームくらいの取りまとめなど、シニアの入り口あたりの経験しか積めないだろうということでした。本来ならば組織全体にわたるティール組織の浸透など、そのレベルの裁量や環境を持ってもらって活動していただくのが理想ではあるものの、それが難しいということでした。
 
また、プロダクトオーナーとエンジニアがいて製品を作り始める段階から、製品が売れて管理が必要になってくる段階まで、一気通貫で体験できるとスクラムマスターとしてはグンと伸びるだろうという話をされていました。しかし、同時にサイボウズはそのフェーズに今はいないということで、こちらの観点からも、サイボウズをいかにスクラムマスターが伸びる環境にするか、という課題も抱えられていることが伺えました。
 
見えている課題が具体的で、どう改善していくか他のメンバーと一緒に考え、変えていこうとしている意志を感じました。
 

会場からの質問 : ジュニアは何から手をつけるのか

天野さんからは担当業務と合わせて、チームでのサポート体制についてもお話しがありました。
 
実業務としては、立ち上げ時のアクティビティやインセプションデッキ、ふりかえりを担当してもらうとのことでした。意識しているのはジュニアに限らずひとりで悩んでしまわない体制とのことで、スクラムマスター職能のメンバーとの 1on1 で状況を共有できるようにされているとのことでした。
 
大友さんからはベトナム開発チームを担当している経験からお話しいただきました。
 
現段階で回っているスクラムのトレーニングに一緒に入ってもらい、過程がわかってきた段階で研修を一緒につくることになるだろう。とのことでした。

時間が足りないけど終わり

サイボウズのスポンサーセッションで登壇した 3 名が RSGT2023 の参加者と話している様子
ブースでお話しする様子

20 分のスポンサーセッションでは語り尽くせないテーマに登壇者のみなさんからは「盛り上がってきて終わっちゃいましたね」「こういうみんなが興味のあるものはプロポーザルを出しましょう」と力強いコメントが飛び出しました。
 
終了後、ブースや Discord でも質問が寄せられていました。ブースでお話しした内容は残っていませんが、Discord で寄せられた質問と天野さんの回答を掲載します。
 

Discord で寄せられた質問

SMの評価って定量的なものを用いていたりしますか?

ご質問ありがとうございます。 定量的な指標は特にありませんが、強いて言えば給与レンジが定量的な物差しになります。給与評価時に評価者・被評価者で「今レンジのどのあたりにいると思う?」と認識をすり合わせる機会があります。このプロセスはスクラムマスターに限らず開発組織の全職能で共通のものになります。 スキルの定量的な測定(評価)はせず、1on1やコーチングといった給与レンジを上っていくための成長支援を検討・実施しています。

スクラムマスターに求められるスキルにもいろいろあると思うのですが、コーチングスキル育成においてなにか仕組みはありますか?

ジュニアなスクラムマスターの場合、コーチングスキルが求められるシーンはあまり多くなく、組織支援や教育が責務になってくるシニア系・マネジメントのメンバーはコーチングスキルの必要性が高まることが多いと思います。 現在は職能ラインの成長支援として、公開コーチングセッションに取り組んでいます。こちらが一番身近な練習の場になると思います。 コーチングは外部の研修も充実しているので、希望したメンバーは自由に受けられるようにしています。

エンジニア、SM、マネージャーのキャリアチェンジをされる方はいますか?

自分がエンジニアからのキャリアチェンジですね笑
まだ明確にキャリアチェンジしたメンバーはいませんが、これからそういうメンバーも出てくる可能性はあると思います。 エンジニア職能のマネージャーがスクラムマスター職能を兼務して、メインのマネジメント業務に役立てたりもしています。

SM同士のコミュニティってどんな感じで運営されてますか?(SM同士の協力とか、定例など)

まだまだ試行錯誤中ですが、今は月一で「スクラムマスターの集い」という会を開催しています。前半はスクラムマスターの参考になりそうなコンテンツを用意して、後半は雑談会という構成です。 あとは社内のグループウェアやSlackにスクラムマスターがやり取りできるチャンネルもいくつかあります。 まだスクラムマスター同士の繋がりがあまり強くないので、お互いに助け合えるような状態にしていきたいです。

ご視聴いただいたみなさま、ありがとうございました

当日、現地ではおおよそ 35 名の方が会場まで足を運んでくださいました。Zoom でもおおよそ 5 名の方が聞いていてくださったと記憶しています。また、ご覧になれなかった方でも、RSGT2023 に参加された方は Discord から辿って YouTube アーカイブを視聴できます。リンクはここでは紹介できませんが、ぜひご覧ください。
 
以上「サイボウズのスクラムマスター育成・評価事情を語る会」Regional Scrum Gathering Tokyo 2023 のレポートでした。

登壇者 3 名がサイボウズの会社ロゴの前で記念撮影をしている様子
登壇者の勇姿