
この記事は、CYBOZU SUMMER BLOG FES '25 の記事です。
こんにちは、新卒フロントエンドエンジニアの mehm8128(めふも) です。
今回は、サイボウズのフロントエンドエンジニアが普段どのような探究活動をしているか、まとめてみました。
本記事は以下の 3 部構成になっています。
- Frontend Weekly
- フロントエンド探求共有会
- 探究活動についてインタビュー結果
それでは 1 つずつ紹介していきます。
Frontend Weekly
まずは毎週おなじみ Cybozu Frontend Weekly です。 zenn.dev
僕も内定者アルバイト期間に 3 回ほど書かせてもらい、正社員として入社後も定期的に書いています。
毎回記事の最初に書いている通り、毎週火曜日に「一週間の間にあった(実は少し前のものでも可)フロントエンドニュースを共有する会」を 1 時間行い、その内容のまとめを Zenn の記事として発信しています。
普段から Slack の専用チャンネルにそれぞれが気になったトピックを共有し、Weekly の時間になったら毎回司会と記事執筆担当を決めて、各トピックを共有した人が説明していきます。
Slack への投稿の例をいくつか紹介します。

今回紹介しているのは内容をしっかり記載しているものですが、読む時間があまりないけど気になるトピックなどはリンクと概要だけ投げて、Weekly の時間にみんなで読むこともあります。
みんな興味の範囲がバラバラなので、自分が興味のあるトピックについて話せる一方で、積極的にキャッチアップしないトピックについても学ぶことができ、キャッチアップにとても役立っています。ちなみに僕は Web アクセシビリティや UI 系のトピックに興味があるので、そういう領域に詳しい先輩が共有しているトピックについては特に興味を持って読んでいます。
フロントエンド探求共有会
こちらはあまり外部には発信していないものなので、知っている方は少ないかもしれません。
毎週金曜日に 30 分間、一週間で行った探究活動について共有する時間です。聞くだけでも OK なので、僕は毎回参加するようにしています。
こちらは最近だと、主に以下のようなトピックが挙げられています。
- 乗りこなせ-モダンフロントエンド | gihyo.jp の記事執筆状況の共有
- 去年の 10 月からモダンフロントエンドについて gihyo で連載している記事です
- 一人アドベントカレンダーの執筆状況の共有
- 自分含めて 3 人が昨年末に、12/1 から 12/25 まで毎日特定のテーマでブログ記事を出すという企画をやっていました。その執筆状況の共有や、他社の一人アドベントカレンダーの状況をみんなで見たりしていました
- AI 周りのキャッチアップ・試してみたことの共有
- 最近だと、AI 周りでツールを作ってみたり、MCP や Claude Code を触ってみたりといった話が多い印象です
- その他最近読んでいる tc39 の proposal の話だったり、作っているものの話など

また、僕も少し前に Biome の lint ルールを作る PR を 2 件ほど出したので、その概要について共有しました。
feat(lint): implement useUniqueElementIds by mehm8128 · Pull Request #6082 · biomejs/biome · GitHub
feat(biome_js_analyze): implement noExcessiveLinesPerFunction by mehm8128 · Pull Request #6166 · biomejs/biome · GitHub
このように、発信活動や探究活動について報告する場があります。他のメンバーがやっていることから学ぶことができるのはもちろん、自分ももっと探究活動を頑張ろうという刺激をもらうことにも繋がっています。
探究活動についてインタビュー結果
今回この記事を書くにあたり、mugi さん、Saji さん、saku さんの 3 名のメンバーにインタビューをし、探究活動の方法や意識していることについて聞くことができました、ご協力いただきありがとうございました。
それでは 1 人ずつ紹介していきます。
mugi さん(フロントエンドエンジニア)
普段の探求方法について教えてください。
Xで興味がある範囲のOSS公式アカウントやメンテナーをフォローしていたり、リストを作ったりしていて、
気になった記事は Raindrop.io というブックマークサービスに放り込んで、後から読んでます。
また、ちょっとズルいですが、サイボウズのフロントエンドやってる人たちのキャッチアップ力が非常に高く、
かつメンバーによって得意範囲や興味範囲も違うので、社内での情報共有会(Frontend Weekly)がある意味最強のキャッチアップ手段ではあるかもしれません。
似た話ではありますが、すべてを追うのは正直限界がありますし、個人的にもそこまでのモチベーションは続かないと自覚してるので、
情報を収集・整理が非常に上手な方(azuさん、azukiazusaさん、など)の発信を追うなどして、
自分が強く興味のある範囲以外については、ある程度の重要キーワードだけを抑えてインデックスだけ作っておくような感覚でやってますね。
時間的には、夜にリビングのダイニングテーブルでMacBookを広げて、探求や発信の作業をやっていることが多いです。
最近特に追っている・探求しているトピックはなんですか?
例に漏れず、最近はAIを用いた開発周りを積極的に追っていますし、個人的にもかなり試しています。
ほぼ全部の探求時間で Claude Code で何かやって遊んでるような気がします(半年後には全然違うものを使って遊んでいそうな気もします)。
よく言われていますが、実際に試すと、コーディングの効率化というレベルを超えて、
開発スタイルそのものが大きく変わるんだろうな、という実感を得られています。
フロントエンドは特に相性が良い印象があり、今後はこれらを上手く操れることが最低条件になっていく予感がしています。
また、Next.js App Router 周りについては、副業先で使っていることもあって動向を追っています。
React 自体の最新のコア機能とも非常に関連が強いこともあり、React 自体を理解する上でも重要かなと感じています。
先述の AI 関係のツールを組み合わせつつ、キャッチアップをしていますね。
探求している内容で特に「業務に役立った」みたいな経験があれば教えてください。
公式ドキュメントや誰かが書いた記事を読めば、ある程度は問題なく開発できるとは思うのですが、 そこから一歩踏み込んで「そもそもこれってどういう仕組みなんだ?」と思った部分を掘り下げて調べてみることが多いですね。
いくつか例をあげると、次のようなものは実際にコードや仕様を読んで仕組みを把握していました。
- Vue.js での computed での再計算が動作する仕組み
- String.prototype.trim() が何をトリムするのか
- React cache() でなぜ Per-request Caching が動作するのか
- React Server Component での RSC Payload の謎の文字列は何なのか
最後に一言お願いします。
探求や発信は、尋常じゃないアウトプット量の方が非常に目立つため、それと比較してしまいがちです。
ただ、あまり意識してしまうと疲れてしまうので、自分のペースでやっていくのが大事かなと思います!
ありがとうございました!
Saji さん(フロントエンドエンジニア)
普段の探求方法について教えてください。
自分が興味ある分野について調べてまとめたり、実際に実装をしてみたりしてフロントエンドの探求をしています。どうしても読むだけだと抜けていってしまうので、自分なりにまとめたり(自分は Cosense を好んで使っています)、Playground で実際に動かしてみたりすることが多いです。もちろんできることならブログや登壇、OSS などに活かすのが一番血肉になるとは思っていますが、なかなかそこまでできていないこともあります。逆に自分を追い込むために、先にブログ企画や登壇を入れてそれまでにより理解を深めるといった方法はたまにやります。(それなりに大変なので万人におすすめはしませんが)
時間は特に決めていませんが、夕方から夜にかけての時間帯に取り組むことが多いです。弊社はフレックスなので、仕事で「早く始めて早めに上がる人」が上がってからくらいが個人的探求タイムです。
情報を得る媒体としては普段は X や Bluesky を通じてブログなどの情報を集めることが多いです、またこれらをキュレーションしてくれるサービスなどで言うと JSer.info や Menthas などはよく見ている気がします。それ以外にも会社の Slack チャンネルでブラウザの更新情報や TS 公式の Blog が流れてくるので、そういった情報も見ています。あとは会社の frontend-topic チャンネルの流量が多いので知らない情報はよくそこから拾っています。自分が特に興味を持っている分野に関しては、少ないですが meeting Note や PR などを watch しています。
モチベーションはもちろん「業務に役立てるため」もありますが、自分が面白いと思っている情報を深掘りして調べに行くことが中心になっている気がします。何よりその方が楽しいですし、ブログや登壇などのアウトプットにも繋げやすい印象があります。その方が長続きするとも思いますし。
逆に自分が得意でない領域に関しては、本から入門したりして、薄く広く体系的に埋めていくことを意識しています。
最近特に追っている・探求しているトピックはなんですか?
最近というよりはここ数年ですが、特に注目しているのは国際化機能(Intl)周りや日時周りです。
Intl などの国際化機能は JavaScript の標準でありながら、他の仕様やドメイン自体の知識が必要で他の JS 仕様の議論とは一味違った難しさがあるのですが、そこが魅力でもあると思っています。言語や文化といったルールも規則性もない領域に対してどのように API や挙動をデザインしていくのかというのが個人的には面白ポイントかなと思っています。また日時ドメインで言うと Temporal がちょうど各ブラウザで実装が進んでいるので、これから活用例やライブラリの内部で利用が進むのではないかと楽しみにしています。
また仕事に近い部分で言うと、Shadow Realm や JS エンジン on Wasm など web で安全にコードを実行するための仕組みについては興味を持っています。その関連で JS エンジン自体にも興味がむき始めた今日この頃です。
探求している内容で特に「業務に役立った」みたいな経験があれば教えてください。
国際化機能に関してはむしろこれから役立つような支援や共通の仕組みなどを社内で作っていきたいなという野望があります。あとこれはまだ先の話ですが、おそらく Temporal (あるいはそれを利用したライブラリ)を利用したいチームがいれば導入サポートは任せて欲しいなと思っています。
最後に一言お願いします。
ありがたいことに、仕事の時間に探求をしていてもうるさく言われない(もちろんそれだけではダメですが) 環境に入れているおかげでのびのびと探求できている気はします。皆さんも良い探求ライフを!
ありがとうございました!
saku さん(デザインテクノロジスト)
普段の探求方法について教えてください。
キャッチアップしたい情報を軒並み RSS Reader にまとめています。ブログ記事はもちろん、Bluesky や X、Mustdon の投稿、Podcast、ニュースレターも含めてほとんどの情報を RSS Reader に集約しています。
逆に RSS 以外の流入元は、適当に X surfing して見かけたものや、 GitHub で subscribe しているものの通知くらいで、それらは RSS と併せて適宜確認しています。Web 標準系 WG でよく見る人のブログだったり、ブラウザベンダの Intents やブログ、Web に関する Podcast といったものが内容の大半です。
タイミングは、気が向いた時や移動時間にガッと読む/聴くことが多いです(朝昼晩と確認する癖つけてるわけじゃないが、1日1回どのタイミングかでガッと確認してる気はする)。
最初はフロントエンドチームでやっている Cybozu Frontend Weekly にネタ投稿できるようになることがキャッチアップのモチベーションでした。
当時はカテゴリ関係なく(RSS も使ってなかったし)、X などでランダムに流れてくる情報で(みんなにとって)面白そうなものを投稿していましたが、
自分のアイデンティティが RSS に寄ってきてからは、RSS Reader が興味のあることでいっぱいになって、キャッチアップするのが楽しくなっていったのが次のフェーズです。
今は、膨大な量の情報に対して、ある程度のセンスを効かせて意味を持たせることにモチベーションを感じています。
「この情報ってウチにも応用できそう」「この議論、今こうなってて、将来的にはここに影響してきそうで、重要な変更になり得そう」などといったことを察知したり、自分なりに考えたりするのが好きです。
それが日々の開発に活きれば万々歳だと思ってます!
最近特に追っている・探求しているトピックはなんですか?
強いていうなら、CSSWG や WHATWG、OpenUI といった Web 標準の中でも密に UI サイドと関係するグループの動向です。ブラウザベンダの動向もぼちぼち追っています。
Web という概念の中で繰り広げられているストーリーが好きで、その中でも特に UI に興味があるというのが、追い始めたモチベーションだったと思います。
デザインシステムやエンジニア⇄デザイナ間のコミュニケーションなど、抽象度の高いレイヤーを本務としてやるようになってからは、標準と普段仕事でやっていることの連携を考える需要が増えたと思っているので、業務を通してユーザに貢献できるという面でも追うモチベーションが高いです。
もう少しエコシステム側のデザインシステム動向や、標準側でも ARIA、WAI 周りの動向はちゃんと追わないとな〜と思ってます。
探求している内容で特に「業務に役立った」みたいな経験があれば教えてください。
細かい知識の補完も含めると相当な量あると思いますが、本腰入れて "探求" したものだと、「Baseline の探求」は、社内でプロダクトの指標とその運用方針を見直す有力な根拠になりました。 blog.sakupi01.com "探求" ではないかもしれませんが、プロダクトの指標決めの議論に関わっていたり、日々のキャッチアップでブラウザのリリース動向を追っていたりすることから、「このコンポーネント/機能にはこういった Web 標準の機能がいつくらいから使えそうで、今はどう動けばよさそうか」みたいな話ができています。具体的には Popover API の利用可否でそういう議論になった記憶です。
最後に一言お願いします。
キャッチアップや探求ができる環境に感謝です!
ありがとうございました!
まとめ
いかがでしたでしょうか。サイボウズでは一口にフロントエンドと言っても様々な領域に興味を持つ人がいて、今回挙げたような場において色々な知見や刺激をもらうことができます。
これからもこういった場に積極的に参加するとともに、自分ももっと共有する側になれたらと思います。