コドモンとサイボウズで、XPとスクラムのアプローチの違いを語るイベントを開催しました!

こんにちは。kintone開発のAndroidエンジニア、トニオ(@tonionagauzzi)です。

本日は、株式会社コドモンのオフィスでイベントを開催したことを報告します!

イベントのロゴ
目指している姿は同じ! XPとスクラムのそれぞれのアプローチの違いを語ります - connpass

コドモンとサイボウズの2社による、初の合同開催イベントでした。

開催の経緯

コドモンさんとはKotlin Festでお互いスポンサーして以来交流しており、合同イベントやりたいですね〜と話していました。それがめでたく開催できたという経緯です。最初に交流させていただいた私にとってはとても感慨深いイベントでした!

会の詳細

開催日時

  • 2025年2月13日(木) 19:00 - 21:30

テーマ

  • XPとスクラムのアプローチの違い

タイムテーブル

  • 19:00 - 19:10 オープニング
  • 19:10 - 19:25 コドモン発表
  • 19:25 - 19:40 サイボウズ発表
  • 19:40 - 19:45 休憩
  • 19:45 - 20:25 パネルディスカッション&質疑応答
  • 20:25 - 20:30 クロージング
  • 20:30 - 21:30 懇親会

当日の様子

開場!
今回はコドモンさんの会場をお借りしました。ちなみに来月にはオフィス移転するそうです! www.codmon.co.jp

乾杯!

「オープニングで乾杯?懇親会で乾杯?」と直前のリハーサルで話し合っていたのですが、結論オープニングで乾杯しました!🍻

最初は運営も参加者も少し様子見な感じでしたが、そこで乾杯をしたことで、イベントに向けて一体感が高まったような気がしてよかったと思います。

会の説明

コドモンのけんてぃさんから、この会の内容や注意事項などの説明がありました。

オープニングの様子

オフライン限定イベントということで、成功談ばかりじゃなく生々しい話もありにしよう!と流れを作ってもらいました。そのおかげで、後のLTやパネルディスカッションでは表面的な話から一歩踏み込んだ現場のつらみのような話もしやすい空気になっていきました!

サイボウズ発表

サイボウズのトニオが『サイボウズの開発チームが行っているスクラムの紹介』と題して発表しました。

トニオの発表

サイボウズがいつどのようなきっかけでスクラムを始めたか、大規模になってチーム分割したkintone開発チームは今どんな体制か、そして「スクラムやめたいんですが…」と言われることもあったりアラインメントで組織最適化の仕組みづくりをしたりといった試行錯誤を繰り返しているという話をしました。

資料は以下からご覧ください!

speakerdeck.com

コドモン発表

コドモンでEMをされている市川さんから、コドモン開発チームとXPの紹介がありました。

市川さんの発表

最初はコドモン開発チームの体制の紹介がありました。1チームごとの構成はサイボウズの図と多少似ていますが、スクラムではないのでスクラムマスターはおいていないなどの違いがあるとのことでした。

続いてXPの話でした。XPはプラクティス群を原則(重要な価値観)を意識しながら実行することでアジャイルな状態の実現を目指すものだという前提と、それらをスモールステップで組織に取り入れてきたとのお話でした。

なぜコドモンがXPを始めたのかが興味深かったです。コドモンでも一時期スクラムを導入していましたが、XPはいいぞマンの入社がきっかけとなり、XPを小さく始めて定着したということでした。

スクラムでなぜうまくいかなかったかなど、発表内容について詳しく知りたい方は、市川さんの発表スライドおよびブログ記事をぜひお読みください。

speakerdeck.com

tech.codmon.com

パネルディスカッション

LT登壇した4名に加え、司会として株式会社ユーザベース 野口さんに入っていただき、パネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションの様子 司会ズームアップ

パネルディスカッションの様子 コドモン側

パネルディスカッションの様子 サイボウズ側

ディスカッションテーマは事前に用意していたものに加え、LT中にSlidoに寄せられた質問をピックアップして司会が回していくというスタイルで進みました。

興味深かった発言をいくつか紹介します。

サイボウズのスクラム、リアルはどうなの?

とうま:コドモンさんの発表の中であった「いつの間にかスクラムイベントを回すのが目的になっていた」という話、スクラムしてるとめちゃめちゃあります。そういうときはスクラムマスターの存在が大事になってきます。最後はチームが自律してスクラムマスターがいなくなるのが理想ですが、そうでないうちはスクラムマスターがチームと対話して「何のためにこのイベントをしてるんだっけ?」と問いかけ、チームに気づきを促すことが重要だと思ってます。

XPとスクラムそれぞれの難しさ、どうやって乗り越えてる?

けんてぃさん:責任・イベント・成果物が明確に定義されているスクラムと違いXPでは合意された定義が存在しないため、目的・手段・マインドの共通認識をとる難しさはあります。なので、XPをチームにインストールするにあたっては、XPを推進できる人がそのチームにしっかり入り、日々の言動で示していくことが重要だと思っています。XP導入初期は、そのように「ひとつのチームで小さく始め、そのチームでXPを頭と体で理解したメンバーが、次にまた別のチームで他のメンバーにXPを伝播していく」という流れを意識しました。

トニオ:スクラムを導入して規模が大きくなるとコミュニケーションパスが増えて意思決定が遅くなりがちです。これはどのチームでも、どの会社でも起きると思ってて、私たちはアラインメントを毎週取ることで大規模組織において意思決定を早めようとしています。

XPではペアプロに抵抗がある人に対して、どのようなアプローチで取り組んでもらいましたか?

市川さん:今はカルチャーマッチを重視して採用するため、入社後にペアプロに抵抗があるなどの状況は発生しませんが、XP導入時は「ペアプロがしんどい」という話がでることがありました。その話を深掘りすると、ドライバーとナビゲーターという線引きを形式的に意識し過ぎて、機械的なペアプロになっていそうなケースが多く、目指すべきペアプロの姿としてペアプロの心得を一緒に見て「ただペアで作業をすること自体が目的ではなく、ペアでよりよいものをつくるのが目的でペアプロをする」と言う話をすることが多かったです。 人によってペアプロは合う合わないがあると思うので、合わない人に対して、ペアプロを無理強いするということはしないですが、コドモンでは今のところ、ペアプロの目的や理想とするやり方を説明すると、納得して取り組んでもらえています。

いま実践しているスクラムを「もし」違う開発手法にするとしたら、どのような手法にするのでしょうか?

とうま:FASTという選択肢もあるかもしれません。FASTは、OSTにインスパイアされた流動的なフレームワークです。スプリントのような一定間隔による開発でもなく、チームも固定化せず都度自律的に形成します。

自律性が求められるフレームワークですので実践するのは難しいとは思いますが、その分個人的な興味を持っています。

スクラムを自慢して!

トニオ:スクラムは不完全なフレームワークだと知っていて導入し、最初はその通りやってみることから始まるので、最初はだいたい失敗します。もちろん最後に成功することは大事ですが、最初に堂々と失敗して学べるところがいいなと思います。

パネルディスカッションの感想

登壇者の属性の違いや、XPとスクラムのさまざまな違いから、パネルディスカッションでどれだけの質問を回せるだろうと思っていましたが、司会の野口さんがいい感じに質問を決めたり回答者を指名してくださったおかげで、とても充実したパネルディスカッションになりました。

XPとスクラムは、フレームワークとしては違うもののどちらもアジャイルマニフェストに沿って生まれたものであり、目指す方向性は同じだ!ということをあらためて認識して、ディスカッションを終了しました。

懇親会

懇親会は、できるだけ多くの人と交流できるよう、椅子を撤去して立食形式にしました。また、知り合いがいない人も輪に入りやすいよう、パックマンルール*1を意識するようお願いしました。

LTやライトニングトークを聞いてくださった参加者の皆さんからサイボウズとコドモンの社員がいろいろな質問を受けたり、逆に皆さんのチーム開発現場の話を聞いたり相談に乗ったりして、非常に楽しく学びが多い時間を過ごしました。

個人的に印象に残ったのは、製造業の方やスクラム未導入の方が学びを得ようと参加してくださったことや、ゲーム業界特有のリリース事情(イベントのある日にリリースが決まっているなど)でどのように素早くフィードバックを得るか?といった悩みを聞いたことでした。また、スクラムを思いきってやめようか悩んでいる事例もあると私が話したことについて、一時的にカンバンに変えるとか、スクラムイベント単位で続けるかやめるか判断するのがありなんじゃない?と助言をくださった方々もいました。

コドモンの社員さんと話す中では、コドモンにXPやペアプロが強く浸透している理由として、特定の誰かが強いリーダーシップを発揮してXPを導入してきた効果が強いように感じました。また、コドモンのみなさんの仲の良さをあらためて感じ、この雰囲気の良さも意思決定を助けているのだろうなと感じました。アプローチの方法で迷うとき、その方法で得られる効果を適切に言語化して熱量高く人を巻き込んでいくことの大事さを感じました。

参加者アンケート

参加者のみなさんからはアンケートで感想をお聞きしました。気になったご回答やご意見を紹介します。

  • XP導入の背景と広げ方の実例を聞けて参考になりました!
  • スクラムとXPはミリしらでしたが、懇親会にて自社で導入するにはどうしたらいいかなどの具体的な意見交換ができたのが良かったです。
  • コドモンさんのXPの取り組みや評価については弊社と似たりよったりの状況もあり学びが多かったです!
  • 参加者の方々もスクラムやアジャイルの見識が深く、非常に学びがありました。
  • もっと色々お話を聞きたかったので、パネルディスカッションや懇親会の時間がもっと欲しかったです!

ご好評いただけたのは、参加者のみなさんと一緒に良いイベントづくりができたからだと感じています。ありがとうございました!

まとめ

今回はXPとスクラムの違いを語るイベントを開催しました。アプローチの違いから何かお互いに学びがあるのではということからイベントの企画に至りましたが、実はXPもスクラムもアジャイルマニフェストに共感して同じところを目指していることがわかりました。他のアジャイルイベントではあまりないようなテーマで情報共有ができたのではないかと思います。

次回も違ったテーマで交流会をやりたいと思っていますので、ぜひまたよろしくお願いします!

【変更履歴】 2025年3月5日 記事内の画像サイズを揃えました。