品質保証支援部の徳永です。
私たちのチームでは、不具合情報公開サイト(社外向けに不具合情報を公開するWebサービス)を、kintoneとWordPressを組み合わせて構築・運用しています。さらに、Amazon Bedrockを活用することで、生成AIによる記事作成の自動化・効率化を実現し、よりスムーズな情報公開を可能にしました。
本記事では、特に生成AIを活用した機能の実装内容と、技術的な工夫についてご紹介します。
システム構成の概要
- kintone:情報の入力・管理を行うノーコードツール
- WordPress:社外向けに情報を公開するCMS
- Amazon Bedrock:生成AI(LLM)をAPI経由で利用できるクラウドサービス
連携方式:
kintone(アプリ1)
↓ (kintone REST API)
↓
Amazon Bedrock
↓ (Bedrock API)
↓
kintone(アプリ2)
↓ (kintone REST API)
↓
WordPress
実装した生成AI機能の概要
今回実装したのは、以下のような処理を行う機能です。
- 不具合情報を管理する kintone(アプリ1) に登録されている、英語の情報を取得
- Amazon Bedrockを通じて、特定の記法に沿った日本語文章を生成
- 生成された文章を、公開情報作成用のkinotneアプリ(アプリ2)に登録
技術的な工夫ポイント
1. プロンプト設計の工夫
生成AIの出力品質を左右するのは、プロンプトの設計です。今回は以下のような工夫を行いました。
- 翻訳ルールの明示:製品内の文言は辞書的に登録を行い翻訳を指示。文体も統一。
- 記法の明示:出力のフォーマットを定義し、タイトルの書き方・箇条書き・情報の書き分けなどを明確に指示。
プロンプトは全体で2500字程度、作業は3ステップに分けて指示を行います。
2. モデル選定
複数のLLM(GPT-4.1、GPT-4 Turbo、Gemini 2.5 Flashなど)の出力を比較し、今回はClaude Sonnet 4.5を採用しました。理由は以下の通りです。
- 長文処理に強く、文脈保持力が高い
- 出力の安定性が高く、指示した記法からの崩れが少ない
- 日本語の自然さが他モデルより優れていた
比較した各LLMについては、次のような評価でした。
- GPT-4.1:プロンプトに沿った記法反映に難あり
- GPT-4 Turbo:日本語として違和感のある表現が気になる
- Gemini 2.5 Flash:日本語として違和感のある表現が気になる
3. シンク機能への組み込み
不具合情報を管理するkintoneアプリ(アプリ1)から、公開情報作成用のkintoneアプリ(アプリ2)へのシンク機能に、AIによる記事生成機能を組み込みました。 kintoneアプリとAmazon Bedrock間のデータ連携は、kintone REST APIとBedrock APIを利用しています。
kintone(アプリ1)
↓ (kintone REST API)
↓
Amazon Bedrock
↓ (Bedrock API)
↓
kintone(アプリ2)
これにより、公開情報作成用のkinotneアプリ(アプリ2)には、特定の記法に沿った日本語の文章がシンクされるようになりました。
効果
- 作業の効率化
不具合情報公開サイトで公開する情報は、次のフローで作成しています。このうち1と4の作業が終わった状態から記事の作成を始めることができるようになり、情報公開をよりスムーズに進められるようになりました。
1. kintone(アプリ1) に登録されている不具合の内容(英語)の翻訳
2. 検証環境で不具合の再現確認
3. 最低限の不具合発生手順を書き起こし、kintone(アプリ2)に登録
4. 特定の記法に沿って体裁を整える
5. 4までの作業者とは別のメンバーによる内容チェック
6. 記事公開
- 記法適用の正確性向上
プロンプトで指定した記法が正確に反映されるため、人手による誤記やミスの発生を防ぐことができます。
今後の展望
公開情報の品質向上
今回の機能で生成した文章はそのまま社外へ公開できるわけではなく、担当者による記載内容の動作確認や情報の追記が必要です。 情報公開前にさらに生成AIを利用したチェック機構を追加したり、LLMを新しいモデルに更新していくことで、より安定した品質の情報を提供できるようになるのではないかと考えます。セキュリティへの配慮
今回の機能追加に合わせて、社内ガイドラインを元にリスクを把握したり、対策としてガードレールなどを検討し、活用を進めました。
今後も引き続き、新たなリスクの把握や対策の検討を継続していきます。
まとめ
kintoneとWordPressで構成された既存システムにAmazon Bedrockを組み合わせることで、生成AIを活用した情報公開システムを構築することができました。
不具合情報公開システムへの生成AIの導入は、情報の質の向上と公開スピードの両立を推進します。今後も、業務に密接に関わる領域で、さらなる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。