JTF翻訳祭2019で発表しました

こんにちは。開発部テクニカルコミュニケーションチームの澤井です。 最近はまっているスイーツは、大丸東京店1階で売っているずんだシェイクです。

10月24日、第29回JTF翻訳祭に参加しました。テクニカルコミュニケーションチームから仲田と中島が「アジャイル時代の翻訳プロセス」というタイトルで発表しました。
この記事ではサイボウズの発表内容や、発表後にいただいた質問への回答などを紹介します。

JTF翻訳祭とは?

JTF翻訳祭は、一般社団法人日本翻訳連盟(JTF)が主催するイベントです。翻訳会社、翻訳者、クライアント企業などが数多く参加します。 セッションの内容は、機械翻訳の使用の最新事例や特定の翻訳分野のトレンド紹介、欧米の翻訳テクノロジーの紹介など多岐にわたっています。

サイボウズのセッション「アジャイル時代の翻訳プロセス」

朝一番のセッションでしたが、ありがたいことに100名ほどの方にご参加いただきました。また発表後の質疑応答タイムにはたくさんの質問をいただきました。

発表内容

この発表では主に以下の4つの内容についてお話ししました。

  1. プロダクト開発のアジャイル化に伴い、ドキュメント制作や翻訳プロセスはどう変化したか
  2. 高速なドキュメント更新を支える制作基盤について
  3. UI・ドキュメントの翻訳プロセスや使用しているツールについて
  4. 大規模ヘルプサイトの翻訳に機械翻訳を使用した事例の紹介

発表資料はこちらです。

www.slideshare.net ※公開ポリシーの都合上、当日の投影資料にあったツール類のスクリーンショットは除いています。

参加者からの質問

いただいた質問の中からいくつかご紹介します。

クライアント企業の方からの質問

機械翻訳のポストエディットを翻訳会社に依頼して行ったとのことだが、品質に不一致が出たのでは?関係者とどのように合意していますか?

サイボウズでは、ユーザーに素早く、最新のドキュメントの翻訳を届けることを重視し、Garoon 5のヘルプを機械翻訳を使って英語、中国語に翻訳しました。機械翻訳とポストエディット(機械翻訳の出力結果を人手で修正、改善すること。以下、PE)作業による翻訳版ヘルプの公開は今回が初でした。
(ちなみに、この作業では以前の記事で紹介した翻訳支援ツールが活躍しています)。
このプロジェクトでは、以下の要素が必須だったように思います。

  • 社内関係者と事前に利用目的と品質基準について認識を合わせる
    機械翻訳とPEを採用した最大の目的は「ユーザーに素早く、最新のドキュメントの翻訳を届けること」です。言い換えれば、スピードを重視しつつ訳文の品質について最大限の努力をする、ということになります。プロジェクトの開始時に、ヘルプ担当者、マーケ部の担当者などの関係者を交え、事前にこの目的について認識を合わせました。そしてPE後でも残ってしまう可能性のある誤訳については免責事項(PDF)で注意喚起しつつ、公開後も閲覧数などを確認しながら継続的に人間の手による翻訳で修正する方針としました。

  • 翻訳会社と品質基準の認識を合わせる
    機械翻訳のPEでは、訳文の品質にばらつきが出てしまう可能性があります。この点については、諦めても良い(PEしなくてもよい)ポイントを翻訳会社に伝え、納品物の品質基準について認識を合わせました。具体的には「用語の統一は諦める」「明らかにひどい誤訳からPEする」などです。

翻訳祭では、機械翻訳は翻訳者の仕事を奪うのではと言及されていました。また、PEの仕事を受ける翻訳者が少ない現状もあるようです。 一方で、機械翻訳は、人間には到底不可能な素早い翻訳スピードを実現し、今後ますます増えていく多くの情報を素早く世界中のユーザーに届けるためには欠かせない技術でもあります。今回のGaroon5ヘルプの翻訳も、分量の多さや翻訳期間の短さから、機械翻訳の活用が必要なプロジェクトでした。 アジャイル開発では、ヘルプなどのコンテンツも継続的に改善していくことが重要になります。サイボウズでは、翻訳手段のひとつとして機械翻訳も活用しながら、各言語のコンテンツを継続的に改善していきたいと考えています。機械翻訳+PEを採用したドキュメントの公開後も、必要に応じて人間の翻訳者による質の高い翻訳に置き換え、品質の向上を図ります。

翻訳者からの質問

翻訳者が社内翻訳者として働く場合と、翻訳会社から仕事をもらう場合とでは、必要なスキルセットはどう変わりますか?

別のセッションで話されていたことですが、翻訳会社での対IT企業の売り上げは、減少傾向にあるそうです。しかしこれは翻訳需要が減っているのではなく、企業が現場のニーズに即応した翻訳を行うために、翻訳を内製化しているためではないか、とのことでした。サイボウズもまさに翻訳需要の増加から、社内翻訳者を募集しています。翻訳者の方々もこの流れを感じ、キャリアチェンジを検討される方が増えているのではないかと感じました。 ご質問には仲田が「社内翻訳者には多様なコミュニケーションが求められる」とお答えしました。

社内翻訳者の場合、翻訳会社PMの役割の人物がいない場合があるため、翻訳をリクエストしている部署と主体的にコミュニケーションした上で適切な訳文を作成いただける方を求めています。また、サイボウズが提供するサービスやこれまで経験のないツール(GitHubなど)を覚えていただく必要があるので、新しいことを覚えるのが好きな方に向いています。このほか、その方の適性によって、機械翻訳の評価、翻訳関連で使用するツールの選定、社員の英語力向上への貢献など、力を発揮していただきたい場面がたくさんあります(通訳は今のところ募集していませんが、通訳経験のある方も歓迎します!)。興味を持っていただけた方は、ぜひご応募ください。

日英翻訳担当(技術文書・UI翻訳)
日英/英日翻訳担当(全般)

参加の感想

発表後、特にクライアント企業の方から多く質問をいただきました。原文の校正や更新差分管理、機械翻訳、翻訳関連ツールなど、関心領域はほぼ一致していて「御社ではどうされていますか?」とお聞きしたい気持ちになる場面もありました。質疑応答の時間以外で交流があまり持てなかったのが残念ですが、今後も継続的に参加して、情報収集や、機会をいただければサイボウズの取り組みについて発信していきたいと思います。