ユーザーリサーチ勉強会:「ブレインストーミング」を学習する

こんにちは!モバイルチームの松元(@daikimat)です。

今回はモバイルチームとデザインチームの有志で行っているリサーチ勉強会の活動の中からブレインストーミング(以下ブレスト)について紹介します。

モバイルチームで活動している「リサーチ勉強会」についてですが、なぜこの勉強会を始めたかの経緯は、過去の記事にて紹介しておりますので、興味があればご参照ください。

blog.cybozu.io

ブレストはアイデアを引き出すフェーズで使用するもので、汎用的なスキルとなります。
私たちはIDEOのメソッドを参考にブレストの練習しました。 これは完璧なアイデアではなく、多くのアイデア、コラボレーション、突飛なアイデアへの解放を目指したメソッドです。 デザイン&リサーチチームの方に主導していただきブレストを練習した時のやり方を紹介します。

ブレストの基本ルール

最初に IDEO.org のブレストルールについて確認しました。
メソッドには次のようなルールが記載されています。詳細はIDEOのサイトを見てください。

  1. 判断は先延ばしにしよう
  2. 突飛なアイデアを歓迎しよう
  3. 他人のアイデアにアイデアを重ねよう
  4. アイデアをみじかい表現にまとめみよう
  5. 話すときは一度にひとり
  6. 視覚的に表現してみる
  7. 量を求めよう

私たちが定義した「参加者がやること」

上記のルールを参考にしつつ、私たちが追加で定義した「参加者がやること」を紹介します。

書記とファシリテーターを用意

今回、私たちは初めて IDEO.org のメソッドでブレストを行う状況で、 かつオフラインとリモートのハイブリット開催という状況でした。
書記とファシリテーターを用意し、より円滑にブレストができるように工夫しました。

書記
アイデアが出たら付箋に書いてホワイトボードに貼ります。リモート参加の方にもよく見えるようにしアイデアを可視化します。

ファシリテーター
基本ルールに則って運用がされているか確認しつつ、メンバーにアイデアを出すように促します。

  • 複雑なアイデアの場合、「それをわかりやすく一言で表すと?」などと問う
  • ブレストに慣れていないメンバーへのインストラクションとして身をもって例を示します
    • 「いいねぇ~!」を連呼(後述するポジティブ原則の実施)
    • 突飛なアイデアを事前に用意しておき、盛り下がった時を見て投入する

ニックネームをつける

普段使っていない呼び慣れていないような呼び名をつけます。
ブレストに参加する皆が対等であることを意識するための工夫です。 頭を柔らかくするストレッチ的な効果もあります。

実際に使ったニックネームの例

  • らっち
  • Body Builder
  • ボストン
  • はっぱ
  • シトロエン
  • お嬢
  • ジーコ

スタンディング推奨

リモートでの実施だと難しいこともありますが、立つことが可能な人は立って参加します。
発言がしやすいフランクな雰囲気になりやすいです。

アイデアを思いついた時にすべきこと

  • 思いついた人から、アイデアをはっきりと発表をする
  • 1人で喋りすぎない

他の人のアイデアを聞く時にすべきこと

  • 他の人の発表をよく聴く
    • 自分のアイデアを考えることに没頭しない
    • アイデアの拡張または追加に集中する

全体を通して意識すること

ポジティブ原則

  • 発表をし終えた人へ、「いいねぇ~!」で返す
  • 思いつきを出し、発表することでおたがいに場をもりあげる
  • 心配(笑われるかも、恥ずかしい、人格を疑われる、考えが浅いかも)は捨てる

4つの壁を意識する

ブレストを失敗に持っていく可能性のある4つの壁があります。
これらの気持ちになっていないか常に確認し続けます。

  1. 正解を一発で出す
    • いくつものアイデアを修正、廃棄、発展させたものが、優れたアイデア
  2. 失敗=悪い
    • ナイストライ、いい失敗と考える
  3. 「まじめ」や「客観的」が正しい
    • 真剣にかつ楽しみながら取り組むことはできる
    • 必ずしも客観性が正しさにつながるわけではない
    • 独自の見方や考え方も持ち寄ろう
  4. 範囲・枠にこだわる
    • 担当や、専門性など自分に関する枠を意識しすぎるともったいない

実際に行った時の様子

状況

コロナ禍で多くのメンバーが在宅勤務でしたが、このブレストを行っている時期は、数名は出社していていました。
一部メンバーは物理的な会議室に集まり、残りはリモートでzoomで繋いで実施しました。 書記とファシリテーターは物理的な会議室から参加し、ホワイトボードはカメラで映して全員が見える形で実施しました。

議題を選ぶ

今回はブレストを体験してスキルをつけること(ブレストの練習)を目標としているため、ブレストの議題は明確な答えがないもの、かつ身近で考えやすいものをいくつか用意しておきました。

  1. もっとしあわせになる感染予防策とは?
  2. まだ見ぬ〇〇なリモートワークインフラ
  3. 食料廃棄は〇〇で撲滅?

実際に議題にするテーマはその場で参加者に選んでもらいました。 今回私たちが選んだテーマは「③ 食料廃棄は〇〇で撲滅?」です。

ブレストの実施

ブレストは同じテーマで2回繰り返し行いました。
1回目が終わると、出たアイデアの簡単な分類分けや、ブレストそのものの振り返りを挟みました。
ホワイトボードをZoomで共有している様子

このブレストで得られた「食料廃棄は〇〇で撲滅?」に対してアイデアの例​です。

  • マントルで燃やす​
  • 宇宙人にあげる​
  • 食料廃棄権シール(有料)​
  • カロリーに課税​
  • 食料を国で管理​
  • ゴミセンターで再度食事に変える​
  • めちゃくちゃ食べる犬を飼う​
  • 完全栄養食にする​
  • 全部スムージーにする、カレーにする、ピザにする​
  • 土を食べる​
  • 食べるといいねーと言ってもらえる​
  • コンビニ廃止​

他にも80以上のアイデアが出ました。

やってみた学び​

IDEOのルールの効果

ルールを頭に入れた上でブレストを行うことでアイデアの量が多く出ることを感じました。
中には突飛だけど可能性を感じるアイデアも出て面白かったです。
ポジティブ原則のおかげで躊躇せず思い付いたことを出すことができ、また人のアイデアからどんどん発想が広がっていきます。
アイデアを思い付いた瞬間に感じる喜びに連鎖性があり、複数人でその感覚を共有していて単純に楽しい!と思いました。

アイデアを出すスキルは鍛えられる

今回は同じテーマで2回ブレストを繰り返したのですが、後半の方がより多くの意見がでました。 個人の体感的には2回目の方がブレストの習熟度が上がっていてどんどん新しいアイデアを出しやすくなったように思います。普段使っていない脳が活性化されたような感覚です。アイデアを出すスキルは訓練することでスキルアップできる能力だと感じました。

改善点

実施後の振り替えりにて、物理的に1箇所に集まっているメンバーとリモートから参加したメンバーとの間で温度感を感じにくいという感想が出ました。

  • 参加者の表情が読み取れない
  • ホワイトボードの視認性の低さ
  • 音響の分断

などといったリモート会議とリアル会議の差で起きる一般的な課題でした。
今後は物理ホワイトボードに代わるオンラインサービスを利用するなど、オンラインのみで成立するブレストの方法の模索をしていきたいと思います。