ユーザーリサーチ勉強会:「ユーザーインタビュー」を学習する (実施編)

こんにちは!モバイルチームの小島です。 モバイルチームで活動している「リサーチ勉強会」について紹介します。

前回に引き続き「ユーザーインタビュー」について、インタビュー実施と分析についてご紹介します。

おさらい

弊社モバイルアプリのログインフローの改善としてQRコードを使ったログインをテーマに設定し、管理者視点とユーザー視点で評価してもらうために、弊社の社員の2名にインタビューを実施することにしました。また、準備段階の成果物として、インタビューガイドを作成しました。

詳細については、前回の記事を御覧ください。 blog.cybozu.io

今回の記事では、実際にインタビューを行い、結果について分析するまでの過程・学びを共有いたします。

インタビューの実施

インタビューの実施環境についてですが、コロナ禍ということもあってZoomを利用したオンラインインタビューの形式で行いました。インタビュワー、アシスタント、インタビュイー(質問を受ける人)の3人で実施しました。アシスタントは、接続が切れたりトラブルが起こった際にフォローしてもらう目的で念の為設定しました。(実際には特にトラブルはありませんでした)

インタビュー

基本的には前回作成したガイドに沿って質問していきます。ガイドは台本形式になっていて、時間配分と質問内容が細かく書いてあるので、焦ってしまいそうになりますが、じっくり相手の思考を待って「聞く」ことが大事だと感じました。「相手を待つ」と直接ガイドに書いてしまうのも良いですし、予め相手の思考時間を考慮した時間配分でガイドを作成しておくのも重要です。

ただインタビューはナマモノでもあるので、相手がどのような回答が来るか、またそれに対する追質問などはその場で臨機応変に行っていきます。あまり深堀りしすぎると時間を使いすぎてしまうため、時間配分を考えつつ、深ぼって有用な情報が得られそうか、話を切り上げて腰を折ってしまわないかなど、うまく立ち回るにはそれなりに経験が必要だなとも感じました。

インタビューの内容は事前に確認のうえ録画させてもらいます。分析時にどういう発言が合ったか正確に把握することが可能ですし、インタビュワーは聞いたことを記録する負担から開放され質問と進行に集中できるので、可能な限り実施するのが良いと思いました。

Zoomでのインタビューについて

今回はZoomのウェビナーの機能を利用していて、インタビューには直接的には2名(インタビュワー・アシスタント)が参加しました。勉強会自体は5人で実施していて、残りのメンバーは観察のために視聴者として接続していました。

参加者からは視聴者の存在がわからないので、インタビュイー(答えてくれる人)も圧を感じることなくできて良いと感じました。視聴者は眺めるだけではなく、グループウェア上に用意した「実況スレ」にインタビューの内容について思ったことや後で聞いてみたいと思った疑問を思い思いに書いています。(「実況スレ」のイメージはこちらの記事が参考になるかと思います。Slack等に専用のスレッドを立てて書くのでも同じことが実現できると思います。)

会議室で行うようなインタビューの場合は、その場にいる人数が多くなるとどうしても圧迫感を与えてしまいますし、ハーフミラー越しに別室で待機するのは設備として大掛かりになるので、ウェビナーでこのような環境が手軽に作成できるのはオンラインインタビューならではなのではないかなと思いました。

デブリーフィング

インタビュー直後にデブリーフィングを行いました。 具体的には、当事者(参加者・観察者)が、インタビュー内の発言についてどう受け止めたかを、以下のような分類で共有しあいました。これは、のちのユーザー像確立のための分析の精度を上げるためのものです。 (ただし、今回は勉強会の目的でもあるので、分析も同じメンバーで実施しています)

  • 想定していたこと(確認できたこと)
  • 想定していなかったこと(教えてもらったこと)
  • フォローアップで聞きたいこと

以下のような内容が得られました。

Aさん

  • 想定していたこと(確認できたこと)
    • メーラーを介して設定する現行の手順は大変
    • 逆にメーラーを介さないことで敷居が下がり、管理者の問い合わせ対応が減る期待
  • 想定していなかったこと(教えてもらったこと)
    • PC画面の方にQRコードを使う手順が書いてあればいいという意見
    • 実際のオンボーディングではたくさんあるアプリの設定のうちの一つであること、他サービスのメールも大量に来ていること
    • (プロトの画面は割と雑に作っていて迷いを懸念していたが)管理者目線では運用でカバーできる
  • フォローアップで聞きたいこと
    • 副業先(特にIT慣れの差がある場合)で考えたら同じことが言えそうか

Bさん

  • 想定していたこと(確認できたこと)
    • 歓迎されそう(設定が簡単になる)
    • メールを介さないので便利
    • iOSの場合、標準メーラー以外を使う場合につまづくケースもある
  • 想定していなかったこと(教えてもらったこと)
    • 外出先(現場)では(QRコードを表示できないから)使えない可能性 プロトのシナリオはオフィスにいることを前提としており、PCでQRコードを表示してアプリで取り込む想定だった。 証明書が期限切れなどで入れ直しが必要になると、エンドユーザーはトラブルに直面しやすい
    • ビジネスユーザー以外だとQRコードへの理解度が変わってくる​のでは QRコードへの認知が少ないとアイデアが有効ではない可能性もある
    • 手順がヘルプにあればエンドユーザーでもできると思う サポートでは、UIやヘルプを見てわからなかったお客様を相手にする事が多い、ヘルプがあればユーザーが理解できるデザインだと思うというフィードバック
注記(細かい部分は前回記事を確認してください)
Aさん:弊社情報システム部、IT管理者の代表としての回答を期待
Bさん:弊社カスタマーリレーション部、ユーザーサポートの窓口を担当されていて、エンドユーザーの代弁者としての回答を期待

分析

インタビューから数日空け改めて、内容の分析時間を取りました。インタビューの内容を改めて確認し、詳細に考察していきます。そのための準備として、ハイライト(インタビューの録画から内容を文字起こしをしたもの)を作成しています。Microsoft Streamでは、録画した動画をアップロードすると自動で内容を文字起こししてくれる機能があります。自動生成したものをベースに、(認識しきれていない所も多いので)人力で清書しました。

ハイライトを眺めて、改めて各人が解釈をしたことを出し合いまとめていきました。

  • Aさん、Bさんともにポジティブな評価を得られた
  • QRコードが良いというよりは、現行のメールを介するフローの回避が高評価
    • メールは問題の発生源となりやすい
    • QRコードは1つの手段になりうるが、外出時のシナリオでは課題がありそう
  • プロトの評価は改善の余地あり
    • 最初の画面、取っ掛かりに気づいてもらう工夫が必要
  • ユーザーが自身で解決できることが増えれば、情シスの対応コストは減る
    • ただ情シスを抱えているお客様は多数派ではない
  • セキュリティリスクを危惧する反応はなかった
  • 情シスの視点では、予め設定済みの状態で端末を渡したいというのもある
    • このことをキッティングという

デブリーフィングでは拾いきれなかったこととして、セキュリティ面の話とキッティングという別のニーズの話がありました。

まとめ

今回、インタビューの実施は以下のステップで行いました。

  1. インタビュー:ガイドをもとに質問していく
  2. デブリーフィング:終了直後、インタビューワーと観察者で次の観点で考察(想定していたこと/想定していないこと/フォローアップで聞きたいこと)
  3. 分析:やり取りの文章を見ながらじっくり考察

自分が感じた学びは以下です

  • インタビューに集中し、分析時に正確な情報を得るために、インタビュー時に録画させてもらう
  • 一通り流れを体験できたこと
    • 今回の結果としては、アイデアについては一定の評価がありそうだが、課題の発見もあった
  • 新しいニーズの発見できたこと(キッティングニーズ)
  • 想定しなかった課題を発見できたこと(外出時にログインが必要になったときの課題)

以上、「ユーザーインタビュー」についてご紹介しました。 引き続きリサーチ勉強会でやったことをご紹介できればと思います。