自作SSDについてキオクシアの方に伺いました

こんにちは。サイボウズ・ラボの内田( @uchan_nos )です。 SSD の自作という活動について、キオクシア株式会社の社員(元キオクシアを含む)にお話を伺う機会がありましたので、ご紹介します。

インタビューの様子は、電子の森ラジオ(電子工作とプログラミング系ポッドキャスト)にて配信しています。 エピソード 019 自作SSD

打ち合わせの様子

普段の収録と異なり、今回は企業からオフィシャルな立場で収録に来てくださるということで、事前に打ち合わせを行いました。

ラボ内田、キオクシアの日下さんと米澤さんがテーブルを囲んで打ち合わせている
収録に向けた打ち合わせの様子

弊社の東京オフィスにある会議室での打ち合わせの様子です。 写真の左から順に、内田(サイボウズ・ラボ)、日下様(キオクシア)、米澤様(キオクシア)です。

事前の打ち合わせでは、主にどのような話をするかと、出してはいけない話題について確認しました。 企業の看板を背負って出演することの責任をひしひしと感じました。 キオクシアからは広報担当の方もいらしており、緊張しました。

SSD 同人誌やフラッシュメモリ解説漫画、シリコンウェハーうちわ
SSD やフラッシュメモリに詳しくなれそうなお土産

打ち合わせに際してお土産をいただきました。 紙の書籍やシリコンウェハーを模したうちわなど、とても豪華でした。 (うちわは本物のウェハーと同じ大きさなので、バックパックに入らず、まだ自席に置いてあります)

SSD Doujinshi 1/2 のダウンロードは「SSD Doujinshi」 SSD同人誌のご紹介とダウンロードのご案内 | KIOXIA - Japan (日本語) から可能です。

初代の自作 SSD と自作 CPU

打ち合わせでは、いくつかの自作 SSD の実機を見せていただきました。 これらは放送の中で登場しますので、放送と合わせてお楽しみください。

コントローラ基板とNAND型フラッシュメモリを載せた基板が3層にスタックされた自作SSDモジュール
初代の自作SSDモジュール

初代の自作 SSD は 3 層構造です。全体で SSD を構成します。 一番上にある青い基板が NAND 型フラッシュメモリを搭載した基板で、これ自体では SSD ではありません。 NAND 型フラッシュメモリにコントローラを加えることで、全体として SSD として振る舞います。

下層の緑基板がコントローラの役割を果たすマイコン基板(Airio-Base)で、NAND 型フラッシュメモリを制御します。 不良ブロックへのアクセスを代替ブロックへ振り向ける仕組みなどを、このコントローラが実現します。

中央の赤い基板は、そのマイコン基板と外部をつなぐインターフェース(I/F)回路です。 パソコン用の SSD であれば、インターフェースは SATA や PCIe(NVMe)などですが、この I/F 回路はアドレスバスとデータバスを提供するものになっています。

ロジックICを複数組み合わせた自作CPU基板
自作SSDを活用するための自作CPU基板

これは、自作 SSD を記憶装置として使う「TD8」という名の自作 CPU です。 「CPU の創りかた」の TD4 を基にし、レジスタ幅を 8 ビットに拡張したものだそうです。

TD4 では、CPU が実行するためのプログラムを DIP スイッチを並べた「ROM」に格納するのですが、TD8 では自作 SSD に保存するのです。 先ほどの赤い基板(I/F 回路)がアドレスバスとデータバスを提供することで、通常の ROM と同じインターフェースで自作 SSD にアクセス可能になっています。 SSD Doujinshi p.23あたりに説明があります。

3 代目の自作 SSD

SSD Doujinshi 2 p.31 で登場する 3 代目の SSD です。 初代と 2 代目は、マイコン基板の拡張ボードとして作られていましたが、3 代目は NAND 型フラッシュメモリとマイコンを同一基板に載せた構成になりました。 見た目を M.2 SSD っぽくしたところがコダワリだそうです。

コントローラICとNAND型フラッシュメモリを同一基板に載せたM.2型自作SSDモジュール
最新の自作SSDモジュール

放送でも話していますが、一連の自作 SSD は SSD というよりも USB メモリと言う方が近いです。 パソコンの USB 端子に接続することで、USB マスストレージとして見える仕組みだからです。

SSD と USB メモリは、どちらも NAND 型フラッシュメモリとコントローラを搭載したものです。 主な違いはパソコンとの接続方法で、SSD は SATA や PCIe(NVMe)など、USB メモリは USB で接続して SCSI プロトコルで読み書きする、というような違いがあります。 ただ、NAND 型フラッシュメモリにコントローラを付与したもの、という大枠の構造は同じであり、より興味を持ってもらうために「自作 SSD」と呼称しているということでした。

確かに「自作 USB メモリ」というと、かっこいいガワを自作して、オリジナルな見た目の USB メモリを作るという解釈をしてしまいそうです。 その点「自作 SSD」は、見た目よりも中身に焦点が当たる名前だなあと感じました。

世界初の NAND 型フラッシュメモリを利用した SSD

NAND 型フラッシュメモリは、キオクシアの前身である東芝によって 1987 年に発明されました。 その世界初の NAND 型フラッシュメモリを利用して作成された自作 SSD がこちらです。

DIPパッケージのNAND型フラッシュメモリICを載せた基板がArduinoボードに挿さっている
世界初のNAND型フラッシュメモリを載せた自作SSD

まさか、このフラッシュメモリくんは Arduino に接続されるなんて思ってなかったでしょう。 時代を超えて繋がる物語、感動です。

SSD Doujinshi の推しの章

収録に参加されたお三方(日下様、米澤様、村口様)に、SSD Doujinshi 1/2 から推しの章を紹介いただきました。 詳しい紹介は放送を聞いていただくとして、ここで手短にご紹介します。

  • 米澤様:SSD Doujinshi 2 p.30「かんがえる SSD」
    • 推しポイント:p.30 左下のスクリーンショットに本人が登場しているところ。
  • 日下様:SSD Doujinshi 2 p.44「ECC でデータの誤りを訂正してみた」
    • 推しポイント:読むだけで、自分でも誤り訂正できるじゃんと思わせてくれるところ。
  • 村口様:OpenStreetMap の記事
    • 推しポイント:OpenStreetMap は個人でも入手できるビッグデータで、しかも地図なので有用性が高いところ。

第2回 自作CPUを語る会について

収録から公開まで大分時間が掛かってしまいました。 そのため、番組中で既に終了したイベント「第2回 自作CPUを語る会」についての告知があることをご了承ください。 2024 年 6 月頃に第 3 回を開催予定ですので、お楽しみに。