スクラムマスターの価値を組織に伝える -アラインメントの実践とその効果-

この記事は、CYBOZU SUMMER BLOG FES '25の記事です。

こんにちは。 スクラムマスターのToshinari(@10shinari)です⚡️

本記事では、スクラムマスターとして組織とアラインメントを取るために行った取り組み、そしてその結果どのような変化があったのかをご紹介します。

この活動は、私個人のためだけでなく、スクラムマスターという職能全体が組織とより良い関係を築くためのものとして進めてきました。 スクラムマスターとして組織との関係性に課題を感じている方の参考になれば幸いです。

はじめに 〜スクラムマスターの役割は現場ごとに違う?〜

スクラムマスターの役割は、サーバントリーダーやファシリテーター、障害除去役など多岐にわたりますが、現場や組織によって求められるものや期待される成果は大きく異なります。 特に、チーム外のマネジメント層からは「スクラムマスターは具体的に何をしているのか」「どんな成果を出しているのか」が見えにくく、誤解されがちです。

私自身も、スクラムマスターとして活動する中で、組織との間に温度差を感じたり、自分の役割や取り組みが正しく伝わっていないのではないかと不安になることがありました。

スクラムガイドには「スクラムチームがスクラムを正しく理解し、実践できるように支援する」「チームの障害を取り除く」「組織全体にアジャイルの価値観を広める」などの責務が挙げられていますが、実際の現場ではこれらがそのまま通じるとは限りません。

このような状況下で、スクラムマスターが自分の信念だけで突き進んでしまうと、組織との間に認識のズレが生まれ、信頼を損ねてしまうリスクがあります。 だからこそ、スクラムマスターは「自分の活動が独りよがりになっていないか?」を常に問い直し、組織と目線を合わせていく必要があると私は考えています。

組織とのアラインメントを取るための第一歩:責務と取り組みの言語化

私がまず取り組んだのは、「スクラムマスターの責務とチームで取り組んでいくことを自分の言葉で言語化すること」でした。責務に関しては、スクラムガイドの内容をそのまま転記するのではなく、自分が所属する組織の目標や現状に合わせた表現に落とし込むことを意識しました。

例えば、私の所属する組織では「製品進化スピード10倍、インパクト10倍」という目標を掲げています。この目標を実現するために、スクラムマスターの責務も強く結びつけたいと考え、「価値あるものがステークホルダーに届くまでの間を短くしていくことで事業に貢献する」といった形で責務を設定しました。

こうした表現にすることで、スクラムマスターの活動が組織の目標とも自然に結びつき、より具体的にイメージしてもらいやすくなったと感じています。

この言語化のプロセスは、単なる言葉の置き換えではなく、「自分が何を目指し、どのようにして事業に貢献していくのか」を改めて見つめ直す機会にもなりました。

スクラムマスターの責務

スクラムマスターの取り組んでいくこと

マネージャー層とのレビューで組織とアラインメントを図る

言語化した責務と取り組みについて、私はエンジニアリングマネージャーや部長たちと、1ヶ月ほどかけてレビューを重ねました。

このプロセスを通じて、組織とアラインメントを図ることができました。

レビューの場では、当初は意見が分かれることもありました。「エンジニアリングマネージャーと役割が被っているのではないか?」「こういうことにも取り組んでもらいたい」といった疑問や意見を受けることもありました。

しかし、私は相手のバックグラウンドや立場を理解し、「その人からはそう見えているんだ」と受け入れる姿勢を大切にしました。また、「一緒にチームをより良くしていく仲間だ」という気持ちで、対話を重ねることを意識しました。

このように、相手の視点を尊重しながら自分の考えを伝えることで、少しずつ認識のすり合わせが進んでいきました。

アラインメントがもたらした変化

こうした取り組みを通じて、私自身にも大きな変化が生まれました。

まず、スクラムマスターとしての活動が「独りよがり」ではなく、組織からも期待されている、アラインメントが取れているという実感を持てるようになりました。その結果、より自信を持って仕事に打ち込めるようになったのです。

また、チームで解決できないような障害が発生した際にも、以前よりもチームの外のマネジメント層(エンジニアリングマネージャーや部長)を頼りやすくなりました。「スクラムマスターはこういうことに取り組んでいる」という共通認識があることで、相談や協力を仰ぐハードルが下がったのです。

さらに、チーム内のメンバーにも「スクラムマスターはこういうことに取り組んでいくよ」とコミュニケーションしやすくなり、チーム内での活動にもプラスに働きました。

同じ組織内の他のスクラムマスターとの連携強化

アラインメントの効果は、同じ組織内の他のスクラムマスターとの連携にも現れました。

私たちは週に1度、スクラムマスター同士で集まり、活動の相互レビューを行っています。このミーティングの目的は、活動の相互レビューを通して、事業やチームへの貢献度やスクラムマスターとしてのスキルを高めていくことです。

アラインメントを取ったことで、活動をお互いに話す際に「スクラムマスターとして取り組んでいくこと」を起点に話ができるようになりました。また、「スクラムマスターとして取り組んでいくこと」は共通の目標となり、これまで以上に相談や知見の共有が活発になり、目標に対する進捗についてもチームの垣根を超えてコミュニケーションが取りやすくなっています。

まとめ

スクラムマスターの活動は、時に見えにくく、誤解されやすいものです。しかし、まずは自分の役割や取り組みを言語化し、組織と少しずつ認識をすり合わせていくことで、信頼や協力の輪が広がっていきます。

スクラムマスターの役割は、単にチームを支えるだけでなく、組織と目線を合わせて価値あるプロダクトやサービスの実現に貢献することだと私は考えています。

同じように悩むスクラムマスターの方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。