この記事はkintoneの生成AIチームで連載中のkintone AIリレーブログ2026の1本目の記事です。 リレーブログでは、生成AIチームのメンバーがAIトピックに限らずさまざまなことについて発信していきます。
こんにちは、kintoneの生成AIチームでエンジニアリングマネージャー (EM) をしている立山です。
この記事では、kintoneにおけるAI機能を担当するチームが、どのような戦略でAI機能開発に向き合ってきたかについて紹介します。
kintoneにおけるAI機能のこれまで
- 2024年夏:AI機能の開発を開始
- 2024年10月:RAGを活用したAI機能を発表
- 2025年4月:kintone AIラボとしてAI機能を一般提供開始
- 2026年1月現在:提供機能数を拡大中(現在7つのAI機能を提供中)
開発初期フェーズでは、まず価値のあるAI機能を素早く届けることを重視し、チーム自身が機能開発を担ってきました。
一方で、開発を進める中で次第に限界が見えてきました。
その原因の一つが認知負荷の高さです。kintoneでのAI機能開発では、通常のWebアプリケーション開発の知識だけでなく、
- kintone特有のコードベースの理解
- AIバックエンドの設計・運用・評価
といった要素を同時に考える必要があり、チームの認知負荷が高まっていました。
守備範囲の広さは開発スピードに影響していたと思います。
もう一つが、設計難易度の高さです。AI機能に特有だと思っているのが、急速に進化するAI技術や業界標準に追従していかないと、すぐに提供している機能が陳腐化してしまうことです。2024年上期に開発をスタートした基盤では、新しい要求に応えるのがすでに難しく、機能実現のための設計難易度が高まっている状態でした。
やりたいこと・やらなければならないことは多いものの、上記のような要因から、思うように機能を拡充しにくい状況となっていました。
チーム方針の転換
ちょうどそのタイミングで、毎年開催される大々的な社外向けのイベント(Cybozu Days)に向けてAI機能を量産する体制が求められました。この要求をきっかけに、チームが果たすべき役割を見つめ直し、「AI機能を開発するストリームアラインドチーム」から、「AI機能開発をスケールさせることに注力するプラットフォームチーム」に転換することを決めました。
短期的な取り組み:開発の移譲
まず着手したのは、AI機能の開発をkintoneの他の機能開発を担当するサブチームに移譲できる状態を作ることでした。
大きくは、
- AI機能開発に必要なJava, フロントエンドモジュールの提供
- 実装・運用の判断を迷わせないためのドキュメント整備
- AIバックエンドを利用するための手続きの自動化と社内サービス化
を進め、他チームがAIのバックエンドを強く意識せずに機能開発できる状態を目指しました。
特に、AI機能開発に必要なJava, フロントエンドモジュールの提供では、AI特有の
- 機能ごと、ユーザーごとに利用可否の制御をしてガバナンスを効かせたい
- AI用のバックエンドにリクエストを送るための認証の仕組み
- 回答をシームレスに表示し、マークダウン記法もうまく描画したい
といった開発上の要求を満たせるようにし、他チームのAI機能開発速度を下げないよう工夫を行いました。 このような移譲により、チームとしても守備範囲をAIのバックエンドとその境界部分のみに狭めることができるため、認知負荷の低下に寄与したと考えています。
中長期的な取り組み:設計難易度を下げる基盤整備
中長期的には、さらに踏み込んだ基盤整備に現在取り組んでいます。
- インフラを刷新し、AI機能に必要なコンポーネントを立てやすくする
- AI機能における標準的な技術(フレームワークやA2Aなどのプロトコル)を採用し、急速な進化スピードに追従しやすい基盤を作る
インフラ基盤の刷新については、後続のリレーブログで詳しくは説明しますが、Langfuse等のobservability基盤の利用や、利用回数を制御するようなクオータ管理のコンポーネントを立てやすくすることを目的としています。
また、AI機能の核となる、エージェントサーバーの実装では、現在整備されつつあるA2AやMCPなどの技術標準に準拠したインターフェース設計を心がけています。エージェントフレームワークは基本的にこうした技術標準をサポートしているため、うまくフレームワークを乗りこなすことで技術動向に追従しています。
生成AI分野は進化のスピードが非常に速く、新しいパラダイムが生まれることは十分起こりうるものだと私たちは考えています。そうしたものが生まれるたびに設計を一からしなおすような開発基盤だと、生成AI分野の進化スピードに追いつけなくなるという危惧があります。
そのため、最近は、「長く使われる技術を慎重に選び続ける」ことよりも、より開発が活発な勢いのある技術を採用し、採用した技術を将来捨てる可能性を前提にしながら、長く生きるプロダクトを作るという、絶妙なバランス感覚が重要だと感じてきています。
まとめ
私たちのチームが真に追うべきバリューは、AI機能開発をスケールさせ、開発速度を向上させることです。長く続くプロダクトの中では、単にAI機能を作ることではなく、AI機能を継続的に提供し続けられる状態を作ることが求められます。
そのために、開発の適切な移譲と、設計難易度を下げる開発基盤の整備を重要な取り組みとして位置づけ、この要求に応えられる体制を構築しています。
We are hiring!!
kintoneの生成AIチームはAI機能の開発をスケールさせることを目的に様々な取り組みを行っています。生成AI分野は不確実性が高く、正解がすぐに変わる領域だと思っています。私たちは変化に耐え続けられるチームと基盤を作ることを大切にしています。