2012年7月20日(金)に、技術系Q&Aサイトとして世界的に有名な「Stack Overflow」を運営している Stack Exchange 社のメンバーがサイボウズに来社しました(※1)。
日本の技術者とディスカッションをしたいとのことで、サイボウズ・ラボやサイボウズの開発メンバーと様々なテーマで盛り上がりました。
中でも興味深かったのは、Stack Overflowの強みはコミュニティにある、という点です。
情報量やコミュニティの規模では間違いなく世界一のStack Exchangeですが、残念ながら現時点では英語でやり取りされており、日本の多くの技術者が利用するにはハードルが高いサイトとなっています。
そんな現状を受けて、サイボウズのメンバーからは「Stack Overflowの(英語の)コンテンツを日本語に翻訳してみては?」という質問が出ました。
それに対するMiller氏の答えは、以下のようなものでした。
たとえ英語でのやり取りをそのまま日本語に翻訳して持ってきたとしても、そこにはコミュニティが存在しないので、続けていくことは難しいでしょう。
Stack Overflowは、最初は、確実にコミットしてくれるユーザに限定した、プライベートなサイトとしてスタートしました。
当時すでに、Joel Spolsky氏とJeff Atwood氏が多数のフォロワーを抱えていたので、すぐに6000人もの開発者が飛びつくことになり、それによって、初期の段階で数多くのQ&Aが集まることになりました。 オープンなサイトへと移行したときには、すでに数千のQ&Aが用意されていたそうです。
Stack Overflowは情報サイトなので、情報量が絶対的に重要であることは自明でしょう。ですから、最初の段階でできるだけ情報を集めておくというスタートアップのアプローチは王道と言えます。
では、仮に日本で同様のサービスをする場合を考えたとき、「とにかく情報量を」ということで、英語サイトにあるQ&Aを日本語に訳して用意するのが最善策なのでしょうか? 先のMiller氏の言葉から推測すると、それは「否」ということになるのでしょう。 情報量もさることながら、質問者と解答者による相互のやり取りや、それを可能にする場が重要だというのは、いろいろ考えさせられる言葉でした。
果たして、今後、StackOverflowのようなサービスが日本で広く使われるようになるのでしょうか?
この命題に答えを出すべく、すでにQA@ITが挑戦を始めています。 技術者が常に情報を求める存在である以上、何らかの形で技術情報が流通する仕組みは必要とされ続けるはず。 あとは、そこの「コミュニティ」という「装置」をどう融合させていくか。 これは、なかなか興味が尽きないテーマです。
【変更履歴】 2012年9月25日:冒頭の文章に、来訪日時(2012年7月20日(金))を明記しました。