「世界征服は電話応対から」──エンジニアの未来サミット for students 2012 第1回レポート

11月10日(土)に、今年度第1回の「エンジニアの未来サミット for students 2012」が開催されました。

エンジニアの未来サミット for students 2012 第1回の参加者・集合写真
「エンジニアの未来サミット for students 2012」第1回には約50名が参加し、大いに盛り上がりました。

「エンジニアの未来サミット」は、「エンジニアを目指す若手とトップエンジニアの交流から生まれる“エンジニアの未来”を探す」をコンセプトに、技術評論社が2008年から始めたイベントです。2010年からサイボウズとの共催になり、「for students」として対象を学生にフォーカスした形で開催されるようになって今年で3年目となります。

今年は「日本のものづくり再考」をテーマに、今回レポートする第1回に続いて、12月12日(水)と、2013年1月19日(土)の計3回に渡って開催されます。

「ものづくり日本とIT業界の終焉」と題して講演する、小飼弾さん。
「ものづくり日本とIT業界の終焉」と題して講演する、小飼弾さん。マイクをお渡しした瞬間から、小飼さんの「独演会」。

今回、ゲスト講演のトップバッターは、ブログ「404 Blog Not Found」でも知られる小飼弾さん。

開口一番「もう、独演会に入っちゃっていい?」と宣言し、用意してきた1枚の写真を使って、次々と会場に質問を投げかけます。会場から返ってきた答えに、小飼さんがさらにツッコミを入れたり、さらに質問を重ねたり。最初のうちは、うつむきがちにメモを取りながら聞く人も見かけられましたが、キャッチボールというより、千本ノックのようなやり取りが続くうち、参加者みんなの顔が上がり、あれよあれよという間に「小飼ワールド」に引き込まれていきました。

エンジニアの未来サミットは、今年も、ustreamで中継され、録画も公開されるのですが、こうしたテンポ良くやり取りされる対話の小気味よさ、空気感は、その場にいて共有することでしか得がたいものでもあります。

小飼さんが講演で用いた1枚の写真。Windows 8を搭載したパソコン新製品が店頭販売されている様子。
小飼さんが講演で用いた1枚の写真。店頭販売されているWindows 8搭載パソコンを写したもの。

小飼さんはこの写真に「日本のものづくりの問題が集約されている」と言います。買った人がどういうふうに使うかということをイメージできない、と。そうならないためにはどうすれば良いのでしょうか? 小飼さんは以下のようなメッセージで講演を締めくくりました。

まず、それは自分が欲しいものなのか、自分の大切な人に勧められるものかどうかというのは、ものすごく単純で、ものすごく重要で、たぶん、一番重要な情動だと思うんです。そういうものをみなさんには作ってほしい。
「IT技術は目的ではなく、手段である」と題して講演する、はまちや2さん。
「IT技術は目的ではなく、手段である」と題して講演する、はまちや2さん。淡々とした語り口は、小飼さんと好対照。

2人目の講演は、はまちや2さん。

エネルギッシュな小飼さんとは対照的に、淡々とした語り口で会場は一転、静かな雰囲気に包まれましたが、それもつかの間。自己紹介でジャブを繰り出した後、いきなり今日のテーマは「サイボウズの致命的なセキュリティホールについて……うそです」と笑いを取り、巧みに聴衆を引き込んでいきます。

はまちや2さんは、最初に「結論」として「エンジニアで正解」と語りかけました。「エンジニアは食うのに困らない」し、「自分の作りたいものを自分の手で生み出せる」からだと。そして、エンジニア以外の経験も豊富なはまちや2さんらしく、他の職種の具体例なども交えながら説明してくださいました。

「何か作りたいものがあるときに、自分で(それを)生み出せる、これはすごい大きなことだと思うんですね」と語るはまちや2さんは、エンジニアを目指さないにしても、何かものを作りたいという人がプログラミングを覚えておいたほうが良い理由があると言います。「最終的に他人に作ってもらうことになるにせよ、その気になれば自分でも作れるっていう状態で人にお願いできるっていうのは、イメージできる幅がずいぶん違うと思います」。

そしてエンジニアに対しては「職人として技術を極めるのもいい、だけど、視野を広げるのも大事」として、エンジニアもビジネスに目を向けるべきと指摘します。

作りたいものがあったとして、それがどんどん、どんどん大きくなっていったら、どうしてもね、自分一人では作れなくなってくるんですよ。だから、いずれ誰かと協力しないとダメになってくるんですね。

はまちや2さんのお勧めは「電話を取ること」。なぜなら、電話の応対をすることで、人や仕事、お金の流れがつかめてくるから。エンジニアとして世界を目指すために「電話を取る」ことから始めるというギャップの大きさに、会場は大うけでした。

講演の最後に、さらに大きな問いを投げかけました。「3年後に死ぬとしたら、どう生きたいか?」 はまちや2さんは「僕は、長者番付にのるよりも、教科書に載りたい」とし、最後にこう締めくくりました。

いつか死ぬ。生きてるうちに、何かいいものを残そう。せっかくエンジニアなんだから。
トークセッション、登壇者:馮さん、竹迫、はまちや2さん、小飼弾さん。
トークセッションは、質問が途切れることなく予定の1時間を超えて白熱。

しばしの休憩をはさんで、ゲストのお二人に、技術評論社の馮さん、サイボウズ・ラボの竹迫を加えた4人が登壇し、会場からの質問に答えるトークセッションが行われました。ゲストの講演で緊張がほぐれたのか、会場からは途切れることなく質問が続き、結局、1時間の予定を20分もオーバーするほどの盛況ぶり。

質問の内容も幅広く、「プログラミングを始めたいがどうしたら良いか?」や「最初のキャリアにベンチャー企業を選ぶことの是非」といった学生にとって身近なテーマから、「冤罪事件がIT業界にもたらす閉塞感を打破するには?」「ソーシャルゲーム業界に就職することについて」といった旬なネタまで。果ては「同世代の異性と出会うには?」という、オフトピックだけど切実な質問(相談?)まで飛び出しました。

懇親会の様子
懇親会は、限られた時間内に一人でも多くの参加者がゲストと直接話せるようにと、4人のパネリストがそれぞれ4つのテーブルにつき、一定時間ごとに「ローテーション」する配慮も。

最後に行われた懇親会は、議論が盛り上がったトークセッションの雰囲気そのままに、最初から打ち解けた空気で話が弾んでいました。今回も、予定時間を過ぎても話は尽きず、名残惜しさを残したまま解散となりました。

3時間半という短い時間ながら、トップエンジニアとの出会いがあり、エンジニア志望の同世代との交流があり、さらには遠慮なく質問できるチャンスもある「エンジニアの未来サミット」は、まさに足を運んで参加することに意義があるイベントだと言えるでしょう。

残る2回、第2回(12月12日(水))、第3回(2013年01月19日(土))でも多数のご参加をお待ちしています。

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